■ 高性能自然エネルギー建築 ■


【空間的自然エネルギー建築とは】
環境の中に建築が建ちあがるだけで、南側に陽だまりができ、壁の後ろに陰が出来るといった具合に、建築の周辺に局部的な気象の変化が生まれます。

ガラスや金属を使った今日の建築は、その内外に複雑な局部気象を生み出すことができますが、それをうまく計画することで、快適な環境が生まれやすい空間を作れます。このように、建築が建ちあがるだけで発生する自然現象を利用して環境を改善し、電気や石油などのエネルギーの消費を極力押さえようとする建築を、空間的自然エネルギー建築と名づけました。

通常の省エネ建築と比べて大幅に省エネ効果が大きく、快適で楽しい建築が創れますので、積極的な採用を勧めます。


【どんな技術を使うか】
ドラフトによる熱と空気の移動、調湿、蓄熱、調光や断熱、植栽による受熱防止や自然流下などを使います。

これらの手法の多くは、伝統的な建築の中にもしばしば見られ、近年ではパッシヴソーラーなどとして使われます。 しかし、四季の変化が激しい日本では、季節によって不具合が出たり、建築計画上の制約があるなどの欠点があり、あまり普及しませんでした。

ところが最近の建築技術の進歩によって、一年を通して快適で、裕さが感じられる建築がつくれるようになりました。実際の計画では、これだけでは環境が改善できない時期がありますので、夏場や厳冬期だけ最小限のエネルギーを投入して環境を改善しています。

あくまでも、今日の人の快適な生活を支えるためのシステムですので、採算性や快適性を無視したゼロエネルギー建築とは異なります。

1年のうち大半は空調機を稼動させず、調光や自然換気、熱溜りからの熱回収で生活します。夏に近づくと除湿機を稼動させ、真夏と真冬の一時期だけ障子などのパーテーションを閉めて、執務空間や居住空間を空調します。その他の廊下や玄関は局部空調のみ行います。


【コストパフォーマンスはどうなのか】
自然エネルギー技術は微小な自然現象を利用するので、単独で実施すると効果が実感できなかったり、極端にコストパフォーマンスが悪いという問題があります。

しかし複数の技術を慎重に組み合わせれば、飛躍的に相乗効果が高まって経済的にもメリットがあるシステムがつくれます。私どもはこのような効果的な技術の組み合わせを、空間的自然エネルギー建築として提案しています。

今日のエネルギーコストでは、省エネで生み出される費用はあまり多くありませんが、機器の小型化などでイニシャルコストが下がるケースが多く、トータルでは大幅なコスト削減につながるケースもあります。

特に最近の建築は、付加価値空間としてアトリウムを設けたりトップライトをつけるケースが多くなっていますし、何等かの省エネ対策を行わざるを得ない社会情勢になっています。

このような付加価値建築と比較すると、空間的自然エネルギー建築は非常に経済性が高いと言えます。また、国の補助事業を活用すると、初期投資の負担が軽減されます。


【通常の省エネと何が違うか】
一般の省エネは、建築の断熱性能や機密性を強化して閉鎖空間を作り、その中を外界とは違う環境に空調する考え方です。空間的自然エネルギー建築はそれとは逆で、建築を解放的にして周辺の環境を積極的に取り入れ、その環境を加工しながら生活しようとする考え方です。

我々が生活している日本の環境は、基本的には快適です。 この快適な環境を建築に取り入れて、不快な要素だけ最新の建築技術を使って加工すれば、化石燃料を使って環境を改善しなくてはならない時期が短くなって、大きな省エネ効果が現われます。

空調環境は外部と連続的なので、健康的です。 建物も開放的で楽しい建築になります。 また、補助的に用いる空調設備は、空間の特性から放射冷暖房や整層空調などの快適性が高いシステムを使う事になるので、従来のエアコンに比べて快適で静かな空間になる傾向があります。


【省エネのレベルはどの程度か】
シュミレーションで概ね20%程度、実際に稼動させた時には30%以上の省エネ効果が出る事を期待して設計しています。

「かかし米穀深谷工場オフィス棟」は、温帯地域における最も完全な空間的自然エネルギー建築を目指して設計しました。ただし使用している技術は、民間の企業として採算性がある技術のみを組み合わせています。従って、太陽電池などは採用していませんので、ゼロエネルギーではありませんが、とても高性能な省エネ建築である事が立証されました。

この建物は、PAL・CECシュミレーションで22.2%の省エネ効果が期待されました。そして、建物完成後3年間の稼動実績では、初年度と2年度が56%、3年度は58%と言う高性能な省エネ効果を安定して発揮しました。

この数値は、当初計画にあった外壁の緑化と駐車場の緑化が実施されていない状態で達成していますので、今後さらに性能が向上することと思います。また2001年度に登録した別のシステムの幼稚園でのPAL・CECシュミレーションでは、38%の省エネ効果があると算定されました。

空間的自然エネルギー建築は、PAL・CECのシュミレーションでは考慮されない効果が沢山ありますので、実際の性能はシュミレーションよりかなり大きくなる傾向があります。


【空調のレベル】
自然エネルギー建築というと、何かを我慢しなくてはならない印象がありますが、実際は執務空間や居住空間は通常より快適なレベルを確保します。廊下や玄関は空気の物性はラフですが、精神的な楽しさがある空間を狙います。


【なぜ今自然エネルギー建築か】
設備設計担当の郷設計研究所の彦坂氏(領域空調論を展開する先進的な設備計画家)によれば、今日の設備機器は開発が進んでおり、今以上の性能向上にはたいへんな努力を要するが、建築の形状や空間を含めた建築全体での省エネ対策は遅れているので、建築計画の変更で20%程度のエネルギー消費削減は容易だとのことです。

すなわち、今は建築全体で環境対策を行うと、簡単な事で大きな省エネ効果が出せると言う事です。そして、そのような建築全体での環境対策の中で高性能を追求したのが空間的自然エネルギー建築です。

また、従来の方法で省エネを進めると閉鎖的な鬱陶しい建築ばかりになってしましますが、空間的自然エネルギー建築は開放的な建築になるので、楽しい都市景観を形成します。さらに、外壁や屋上に植栽を行った場合は、周辺の気温を下げ、空気環境を改善するので、数が増えると相乗効果を発揮して地域環境全体を改善し、ヒートアイランド現象などを抑制する効果があります。


【工事費】
フル装備のシステムで、概ね90万円/坪程度、80万円/坪以上です。通常の建築でも適切に設計すると75万円/坪以上になりますので、さほど高価ではありません。建物が大きな場合はもっと安くなります。簡略化されたシステムもあります。


【補助事業について】
補助事業の対象になる場合には、省エネ設備にかかる費用の1/3が補助されます。3年間に渡ってエネルギー消費量の報告が必要ですが、我々がサポートしますし、素人の方でも対応できます。

通常の設計料以外に申請関連設計料が発生しますが、これも補助対象になります。 毎年募集がありますが、6月頃には基本設計等が確定できる必要があります。補助事業は単年度事業で、次年度の実施が確定したわけではありません。また、事業が実施された場合も条件その他が変わることがあります。この点ご了承ください。


【設置条件】
高性能な空間的自然エネルギー建築をつくるには、日当たりが良い立地であることが条件になります。階数は平屋建てから4階建て程度までが取組みやすいスケールです。状況によってはビルの上層階や底部に採用することも可能です。住宅から大型ビルまで適用の可能性があります。

*注意 
空間的自然エネルギー建築の設計には、建築環境技術に関する総合的知識を必要とします。 環境技術を断片的に実施することはできませんし、形だけ似せると、非常に不経済かつ不快な建物になる傾向があります。実施に当たっては、設計者及び工事監理者を慎重に選ぶ必要があります。